従来,国内で普及してきた水力発電は,急峻な地形を活かした大規模なものが多く,主に山間地で行われてきた.しかし,近年,自然エネルギーへの意識が高まる中で,これまで未利用であった落差が小さく,流量も少ない,人の生活圏により近い河川や用水路を活用した小水力発電への需要が高まりつつある.そこで,平坦な土地が多く存在する欧州にて開発された重力渦式中水力発電システム(Gravitation Water Vortex Power Plant)に用いられている水車に着目した.この重力渦式水車はタンク内に流水を導き,タンク底部から排水する際に生じる重力渦を利用して発電を行う新形式の水車であり,低落差·小流量での発電が可能である.また,本水車は元々池や湖沼の曝気システムから発達したものであり,曝気機能により水車下流側の水の溶存酸素濃度を高める働きを持っていることが特長である.しかし,本水車は比較的単純な構造であるにも関わらず,その流れ場は自由表面を有するため極めて複雑であり,性能特性や流動特性の詳細は明らかにされていない.そこで本研究では,重力渦式水車の性能と流れ場を実験および自由表面流れ解析により調査した.
展开▼