力学モデルによる多層溶接における溶接変形簡易予測式の提案

摘要

船舶や橋艶プラント配管などの厚板橋造物では多層溶接が多く用いられている.溶接施工においては，溶接トチからの入熱により，溶接部近傍が局所的に溶融し，それに伴い大きな熱ひずみが発生することで，冷却後に溶接変形が残留する1）ことが知られている.特に，厚板溶接の場合には板の剛性が大きく，一度変形が生じてしまうとその矯正は非常に困難となるので，溶接施工時において溶接変形を低減させることは重要であるといえる.しかしながら，多層溶接における溶接施工条件は，熟練工の経験と勘により決定されることが多く，変形発生メカニズムを考慮し変形が小さくなるよう検討された継手設計はなされていない場合が存在する.よって，溶接変形量を事前に予測し，可能な限り低減させる施工条件について検討することは重要であると言える．