高張力鋼再現溶接熱影響部におけるき裂進展挙動の可視化

摘要

へき開き裂の伝播抵抗となる組織因子について理解することは、連続冷却下で複雑な混合組織が形成される溶接部の機械的性質を把握する上でとても重要となる。組織的因子の代表的なものとして、同じ格子対応を持つKurdjumov-Sachs(K-S)関係におけるバリアントの集団であるベイングループが重要であることを、溶接学会全国大会にて報告してきた。しかしながら、ベイングループ内には最大で約21°の方位差を持つ共通最密面をもつK-Sバリアントの集団、つまりClose-packed plane (CP)グループの境界があり、それはき裂伝播に関して、抵抗となりうるが、その影響に関する議論は少ない1)。本研究では、き裂を含む高張力鋼の伝播抵抗組織因子に関して、CP グループ境界の影響を中心に、可視化、議論する。さらに系のポテンシャルエネルギーの減少が、き裂表面形成、開口の塑性仕事に加えて、伝播抵抗組織因子で行う塑性仕事についても議論する。