マルチホップ無線ネットワークにおける送受信端末数と中継率に関する考察

摘要

本報告では，送受信端末間をつなぐ経路の中で，ETXが最小となる経路を最適経路と呼ぶ．直線上に端末が等間隔に分布しているネットワークにおける最適経路の理論的な特定が既に行われている．このような規則的なネットワークでは，最適経路は複数存在する場合があり，どの最適経路を選ぶかによって各端末が中継に使われる確率（中継率）が異なる．ある端末の中継率が高いということは，その端末が他の端末よりも中継に多く使われることを意味し，中継率に偏りがある場合，中継端末の公平性などの問題が生じると考えられる．このような問題を解決するため，各端末の中継率を均等化するための経路選択手法が既に提案されている．この経路選択手法は，一組の送受信端末が通信を行う際にこの間にある中継端末の中継率をできるだけ均等化するように決められた確率に従って各経路を用いる方法であり，最適経路の中からランダムに選択する手法に比べて中継率を均等化できることが示されている．しかし，文献（4）では一組の送受信端末間の通信だけを考えており，送受信端末の組が複数存在する場合に上記の手法が有効であるとは限らない．そこで本報告では，送受信端末の組が複数存在する場合を考え，文献（4）の経路選択手法が有効であるかどうかを検証する．