生体組織の反力再現を目指した力覚の拡張現実感呈示

摘要

システムからの情報を人により直感的に伝えるための次世代インタフェースがもつべき機能の一つとして，力覚情報の呈示技術が提案されて久しい．実際，テレマニピュレーション[1]，リハビリ[2]，医療用シミュレータ[3] など，反力応答を再現できるハプティックデバイスのニーズは高いが，粘弾性など複雑な応答を含む反力を精度良くモデル化するのは難しく計算量を必要とする上，それを呈示するには高性能なデバイスが要求されることから，全体としてのコストが高くなる問題がある．そこで我々は，低スペックな力覚デバイスを使ってリアリティの高い反力応答を実現するための手法として，力覚の拡張現実呈示（Haptic Augumented Reality）[4, 5, 6] を利用することを提案している．キーとなるポイントは，再現する対象に似た物体特性をもつ補助物体を用意し，これにハプティックデバイスから生成された力を重畳することにある（Fig. 1）．これにより，(1) モデル化がしきれない，またはデバイスでは再現しきれない力覚応答を補助物体がカバーすることでリアルな力覚感を呈示できる，(2) 部分的に硬く／柔らかくするなどの反力応答の操作が可能，といった利点が得られる．本論文では提案する力覚の拡張現実感呈示手法の概要について説明し，ARX モデル（Auto Regressive eXogenous model）によるシステム同定によりから生成された反力応答の応答性を解析した結果を報告する．また被験者実験により，提案手法の有効性の評価を行った結果を説明する．