遺伝子変異株を用いた細菌－ベシクル間相互作用のメカニズム解析

摘要

物質が生体膜を通過する際には、膜電位及び物質の表面電位、膜内外での物質の濃度勾配、膜と物質の疎水性相互作用など様々な制約を受ける。これに反して目的の物質を生体内へ効率的に輸送する手段としてこれまで、リン脂質二重膜を基本構造としたカプセル状人工構造体リポソームが利用されてきた。一方で微生物が自身の細胞膜から分泌するMembrane vesicles（MVs）はリポソームと同様の基本骨格を持ち、環境中において微生物細胞や真核細胞に侵入することで内包物質を運搬することが知られている。特に微生物細胞間でのべシクルを介した物質の授受については近年数多くの報告がなされているが、この現象の本質的な理解にまで議論が及ぶ例は少なく、細胞－ベシクル間の相互作用のほとhどが不明なままである。そこで本研究では、微生物－ベシクル間相互作用に関する新規因子を探索することによりその機構解明を目的とした。