ヒートアイランド問題に関する都市空調システムの検討第2 報 個別分散空調機の実性能予測シミュレーション

摘要

近年，都市部ではヒートアイランド現象によって夏期の暑さが増幅され，住民の生活環境は著しく損なわれている． これに伴い建物への熱負荷は増加し，更なる空調用エネルギーや空調排熱の増加によって都市部の気温上昇がもたらされ，悪循環が引き起こされている．ヒートアイランド現象に関しては，これまでに，現象の把握や将来予測，人工排熱の影響，また対策について数多くの研究が報告されている．著者らは前報[2]において，電力，都市ガスについてエネルギー供給サイドから見た大阪市におけるエネルギー消費の時空間的特性を明らかにし，市内で消費されるエネルギー消費量は土地利用形態や時刻により異なり，統計書[3]より得られる平均値と比べて局所的に7～20 倍程度の大量消費地区が存在することを示した．このように都市部では局所的に大量のエネルギーが消費されており，エネルギー消費により発生する排熱の対策を検討することは急務である．なかでも民生用のエネルギー消費は年々増加しており，電力，都市ガスに限定すると大阪市においては1953 年と比べ2002年ではそれぞれ10倍以上に増加している．このうち，空調による電力消費量は家庭において最も大きな割合を占めている．村上ら[5]は空調排熱を組み込hだ都市気候のシミュレーションを行っている．また，添田ら[6]や田中ら[7]は空調屋外機のショートサーキット現象(以下SC現象と称す)による影響を調べている．しかし，これらの報告では，空調室外機の吸い込み温度上昇に伴う機器効率の低下や室外機吹き出し温度の上昇が定量化·一般化されているとは言い難い．また，設置状況によっては室外機の吸い込み温度の上昇だけでなく，吸い込み風量の減少も考えられる．そこで本報では，生活に身近な空調とヒートアイランド現象の関係の定量的評価，また，外気まで含めた空気質の改善制御の観点から，まず，家庭用や小規模店舗事務所などで使用される個別分散空調機（以下，ルームエアコンと称す）を対象に，実性能予測方法について検討を加えることとし，ヒートアイランドによる外気の高温化やSC 現象などによる吸い込み温度の上昇，および設置状況による効率変化について調べた．