表面改質加工（EG-X）法によるNi-Ti形状記憶合金の高品位表面仕上げとその改質効果の検討

摘要

形状記憶合金のなかでNi-Ti 合金は，形状記憶効果や超弾性などの機能に加え，Ti 系生体材料に近い優れた耐食性を有することから，医療分野における応用が期待されている．とくに形状回復時に発生する復元力や超弾性を利用して，固定力や矯正力が要求される骨折治療や脊椎側わh症の治療に利用することができれば，治療期間の飛躍的な短縮が期待できる．しかしながら，合金の主成分であるNi が溶出することで細胞毒性反応やアレルギー反応が促進されることが懸念されており臨床応用は一部の医療分野に限られている．とくに整形外科領域における臨床例は極僅である．そのため，耐食性，細胞毒性のさらなる向上が求められる．そこで，イオン照射や高温酸化(TO)処理により，試料表面でNi 溶出を防ぐためのTi 酸化物層の形成が試みられている．とくに高温酸化処理は比較的簡便な方法であるため，その実用に向けた研究が近年報告されている．しかしながら高温酸化により酸化層を形成させる際，500°C以上の温度で加熱した場合にはNi-Ti合金の形状記憶効果が消失する可能性が懸念される．本研究では，これまで著者らが進めてきたELID 研削プロセスに基づく表面改質加工と高温酸化処理とを組み合わせることにより，より低温領域で効果的に表面機能を向上させることが可能な新たな複合表面改質手法を提案することとした．とくに本報では処理面の表面粗さ·形状に注目し，かかる手法の有効性について検討·考察を加えた．