維持規格における供用前検査の許容基準に係る検討

摘要

(社)日本機械学会(JSME)維持規格は，米国ASME B&PV Code Sec.XI をベースに，これまでの日本における供用期間中検査(ISI)の実績などを考慮して制定されている．日本の軽水型原子力発電プラントではJSME 維持規格に従い，定期事業者検査でISI が実施されている．ISI では，容器や配管の溶接部などに体積試験として超音波探傷試験(UT)を行い，設備の経年変化を確認している．試験結果の判定は，設備の初期データ取得を目的とした供用前検査(PSI)結果と比較することなどにより行われている．このような背景から，JSME維持規格では，PSI 実施を規定しているが，PSI は，ISI のための初期データ取得を目的として実施するものと位置づけ，その許容基準は定めていない．一方，ASME Sec.XI ではPSI の実施及びその許容基準が規定されており，JSME 維持規格と相違がある．本報では，このようなJSME，ASME における規格の相違について着目し，製造時から維持段階の溶接部の体積試験実施状況について，日米の現状を整理するとともに，体積試験に適用されている検査手法の欠陥検出能力について必要な調査を行い，現行JSME 維持規格におけるPSI 規定が妥当であることの根拠を整理した．