一関節筋と二関節筋を基準にした上肢上腕部の機能別実効筋力の推定方法

摘要

スポーツ分野における筋力向上やリハビリテーション分野における機能回復訓練において，日々のトレーニング効果を確認することは非常に重要である.従来の一般的な筋力の評価方法には簡便に計測することのできる関節トルクが用いられているが，この方法では生体特有の二つの関節に同時に作用するニ関節筋の機能を定量化することができない.そこで，我々はヒト上肢の筋配列を単純化した三対6筋（2対の拮抗一関節筋ペアと1対の拮抗二関節筋ペア）で構成される二関節リンクモデルの先端に発揮される出力分布が6角形となることに着目した.その6角形の出力を構成する生体内力（筋力）の筋群を機能別実効筋と定義した.また，機能別実効筋により二関節筋の生体内力（筋力）も個別に評価できることを明らかにし，その計測方法を提示した.しかし，この計測手法は先端出力の最大努力の出力4点と静的姿勢の保持が必要であるため，体幹と四肢を堅固なフレームに固定する必要があり，その最大努力の出力4点のうちのリンク全体が伸びる方向と縮む方向の最大力2点の出力方向の微小な差違が数値化に大きく影響することが明らかになっている.そこで，本研究は新たに簡易な固定でも機能別実効筋力を推定することのできる計測システムの構築を試みた.これまでに簡易固定時でも最大出力に対する体幹のずれの影響が最も少ない姿勢条件および上肢先端の出力条件である最大努力の出力5点により，出力分布を6角形に近似できることが提示できているため，ここでは，その姿勢条件と最大努力の出力5点を利用し，機能別実効筋の6筋の筋力を算出できるソフトウェアを作製した.