空気圧式重力補償装置による1自由度回転機構の展開実験

摘要

宇宙開発ではミッションの高度化によって大型の太陽電池パドルやアンテナが衛星へ搭載される．大型で複雑な構造物では軌道上での展開力の妥当性や展開挙動の予測などの解析と地上試験の両立によって評価される．しかし，地上試験を実施する際には大気の影響や重力の作用を考慮した解析条件へ取り入れて軌道上における挙動を予測する．現状で採用されている地上試験としては，吊り下げ方式がありETS-VIIIの大型アンテナ鏡面や太陽電池パドルの展開試験などが実施されており主流となっている．その他にも平らな床面の上にエアベアリングによって構造物を支えた状態で水平方向に展開動作を確認する下方支持方式があり，この方法によってETS-VIII のアンテナのブーム展開試験を実施した実績がある．吊り下げ方式の試験では，建物の天井に展開軌道を描くようにレールを設置し，そこへ滑車を取り付けて被構造物に接続し展開挙動を実現する．さらに滑車には被構造物の重量と同じカウンタウェイトを吊り下げて重力方向の被展開構造物の慣性による挙動を抑制している．しかしながら，本方式では天井に設置するレールが展開軌道を正確に描かないこと，及びカウンタウェイトの吊り下げ点によって展開構造物の重心の移動が生じ，必ずしも慣性力を打ち消すことができない問題がある．また，下方支持方式の試験では，床面に対して水平に被構造物が運動できるため，エアベアリングによって床との摩擦を抑制できるが，展開と同時に構造物の高さが変化する挙動に追従させることはできない問題がある．