フェースギヤTE制御曲線に沿った座標測定による魚釣り用リールの巻き心地推定

摘要

魚釣り用スピニングリールにはフェースギヤが使用され，このギヤを起点として発生する振動は，ハンドルを介して人の指先に伝わる．この振動が大きい場合，人は不快を感じると共に，糸を通して伝わる魚や水の情報が伝達されなくなり，リールの価値が大きく低下する．ここでは，リールのハンドルを回転させた時に，ハンドルを介して人の指先の触覚で感じるかみ合い振動の心地よさや不快感を，リールの巻き心地（以降：巻き心地）と定義する．筆者らは，フェースギヤの歯面に適切な歯面修整を施すことで，巻き心地を向上させる手法を提案した．また，巻き心地は，フェースギヤ対から発生するかみ合い伝達誤差（TE：Transmission Error）に大きく依存することが報告されている．これは，巻き心地を向上させるためには，フェースギヤおよびその対となるピニオンギヤ歯面の加工精度を向上させる必要があることを示唆している．歯面の加工精度を向上させるためには，ギヤ対の歯面精度とかみ合いを正確に計測する必要がある．しかし，歯車測定機（GMM：Gear Measuring Machine）などの既存の計測システムでは，巻き心地と相関の高い測定結果を得られていない．本研究では，座標測定機（CMM：Coordinate Measuring Machine）を使用してフェース／ピニオンギヤ歯面のTE制御曲線上のみを離散点プロービングにより計測する手法を開発した．本報告では，CMMによる測定結果とかみ合い伝達誤差試験機（TMM：TE Measuring Machine）による測定結果との比較を行い，巻き心地に影響を及ぼしている真の原因を追究する精密測定手法について報告する．