3Dプリンタで製作した平歯車の歯の曲げ剛性に積層方向が及ぼす影響

摘要

一般的に，歯車の製作にはホブ盤に代表されるような切削機械や，射出成形機などが使用される．これらの方法は大量生産に適しているが，専用の工作機械と高価な工具や金型を要するため，試作や特殊な歯車など生産数が少なくなる場合は経済的な方法とは言えない．著者らはこのような場合の歯車製作に3Dプリンタを使用すれば，多品種少量生産や特殊な歯車の製作が容易になり，小回りの利くものづくりができるのではないかと考えた．しかし，3Dプリンタを使用した歯車製造法は確立されていない．また，3Dプリンタでは材料を積層して造形を行うため積層界面が生ずる．このため歯車には異方性が生じることになり，積層界面と歯のなす角度によって歯の強度や剛性に変動が生じ，歯車の性能に影響を及ぼすことが考えられる．そこで，著者らは3Dプリンタを用いて積層方向の異なる数種類の試験歯車を製作してそれぞれの歯の曲げ剛性を実験により計測し，積層界面の方向が，歯の曲げ剛性に影響を与えていることを確認した．著者らは，これらの実験結果を数式で表現できれば歯車の設計や性能シミュレーションに資すると考えた．そこで本研究では，歯のたわみ量を測定する装置に改良を加え，再度実験を行うとともに実験データから回帰分析を行って積層方向と歯の曲げ剛性の関係を表現する数式を探索した．