300MHz帯表面弾性波共振器を利用した発振器型ひずみセンサ

摘要

近年，橋脚やトンネルといった公共設備の老朽化が問題となっており，これら設備の機械ひずみの高精度な観測は，防災と保守との観点から極めて有用である．SAW共振子は小型，低消費電力な素子であるとともに，無線システムとの親和性が高く，ワイヤレスセンサネットワークの構築に好適な素子である．本研究では，このSAW 共振子を用いたセンサネットワークを公共設備のひずみセンシングに応用することを目的とし，300MHz帯表面弾性波（Surface Acoustic Wave：SAW）発振器を利用した高感度ひずみセンサの開発について報告する．我々は，SAW共振子型のひずみセンサを開発し，既成の半導体ひずみセンサの検出限界を超える10~(-6)オーダの微小ひずみの検出に成功している．本研究では，このSAW共振子型のひずみセンサを周波数リファレンスとする発振器型のひずみセンサを開発する．これにより，部品点数が抑制でき，センサを低消費電力化できるとともに，無線通信システムとの集積化が容易となる．開発されたセンサは，SAW共振子と発振器回路の基板とが柔軟なリード線で接続されており，被測物に自由に接着することができる．試作したSAW共振子はこのリード線を含hで評価され，共振周波数384MHz，共振Q155の特性を示した．また，試作された発信器は387MHzにて良好な発振特性を示した．試作された素子の発振周波数とひずみとの関係は引張試験機を用いて計測される．評価の結果，発振周波数はSAW共振子の共振周波数に追従して変化することが実験的に確認され，10~(-6)オーダのひずみ検出に成功した．