インデンテーションと疲労き裂伝ぱ時に生じる塑性ひずみの類似性に着目した硬さと疲労限度の関係

摘要

硬さと疲労限度は，それぞれ全く異なる現象を定量化した値であるが，経験的に相関があることが知られている．村上は，き裂の停留で決まる材料の疲労限度について，ビッカース硬さHVおよび初期微小欠陥を主応力方向に投影した面積areaを用いた予測式σ_w＝1.43（HV＋120）({the square roots of (area))~(1/6)を提案し，多くの工業材料で工学的に十分な精度で予測可能であることを示した．しかし，HV測定に用いる圧子の形状つまり対面角は，ブリネル硬さとの互換性を考慮して決定されたので，HVは疲労限度を予測する硬さとして最適でない可能性がある．また，硬さは応力ひずみ線図で表わされる材料の特性をたった一つの値で表わしているため，硬さを用いた予測式には，精度良く予測できる範囲とその適用限界があると考えられる．そこで本研究では，ビッカース硬さと疲労き裂進展は，どちらも特異点における塑性変形現象であり，そのため塑性ひずみ分布がそれらを支配していることに着目し，FEM数値解析によってこれらの相関を明らかにする．