常時モニタリング実施時の損傷見逃し確率に基づくリスク評価法の検討

摘要

近年，設備の老朽化に伴うメンテナンスの重要性が増大している．特に老朽設備の寿命延長や検査コストの削減が求められているため，メンテナンス計画における意思決定が重要となる．メンテナンス計画の定量的な意思決定の手法として，リスク基準の確率的メンテナンス手法であるRBM（リスクベースメンテナンス）がある．RBMとは構造物の各部位の故障頻度，およびその影響に基づいてリスクを評価し，メンテナンスに優先順位をつける手法である．通常，RBMに用いる破損確率は，損傷の進展予測から導出されるが，回転機器のように損傷が偶発的に発生する場合は，予測ではなくモニタリングによる状態監視が検査手法として有効である．しかしモニタリングでの誤評価は不要な検査を発生させ，経済的損失も生じうる．そこで本研究ではリスクを経済的損失と仮定し，破損のみでなく検査，補修対応の発生による損失を考慮した，常時モニタリング導入時のリスク算出法を提案する．対象は回転機器であるトンネル換気用ジェットファンとし，我々の研究グループで提案するSI-F法によるモニタリングを行った際のリスクを算出し，リスクを最小とするしきい値設定·更新条件の決定方法の検討を行った．