残留塩素によるゴムの劣化

摘要

建築設備では，各部に合成ゴム製品を用いた資機材を採用している．特に，建物のライフラインを支えている配管系では，合成ゴムの特徴の一つである軽量でかつ止水性能に優れていることと，配管施工技能者の高齢化より，従来の鋳物製バルブなどの採用を控える傾向にある．しかし，万能であるはずの合成ゴム製品に，水道水を使用している環境下において劣化の事例が顕在化している．特に，飲用に供している給水·給湯系統では，合成ゴムの劣化が進行すると，黒粉の流出や接続箇所からの滴下などが生じ,機能障害へ繋がってしまう．筆者らは，過去に，水道水中に含まれる残留塩素成分が合成ゴムの劣化に寄与していることを報告した．しかし，その詳細なメカニズムについては，いまのところ不明であるのが現状といえる．これより，耐水性および耐薬品性·耐オゾン性が優れている汎用エラストマーの1つであるEPDMを対象に，水道水に晒された環境下での劣化のメカニズムについて解析·研究を行った．本報では，実験によって明らかになった，EPDMに生じている劣化のメカニズムについて報告を行う．