無灰系摩擦調整剤およびZnDTP 複合添加油下におけるH-free DLC 膜のトライボ特性に関する研究

摘要

ダイヤモンドライクカーボン（Diamond-like Carbon: DLC）膜とは，sp~2，sp~3 混成軌道を持つ炭素により構成された非晶質の炭素薄膜である．DLC 膜は，高硬度，低摩擦，高耐摩耗性，非凝着性などの特徴を持つことから機械要素のコーティング材料に使用されている．特に，輸送機器ではさらなる燃費向上を目的として，摺動部における摩擦損失低減が求められ，DLC 膜とこれに適した潤滑剤の開発が進められている．その中でも，水素フリーDLC 膜の一種であるta-C（Tetrahedral amorphous carbon）膜は，摩擦調整剤（Friction modifier: FM）のGMO（Glycerol mono-oleate）との組み合わせにより低摩擦を示すとされ，エンジン部品として実用化されている．一方， 耐摩耗機能や酸化防止機能を併せ持った多機能型添加剤として広く使用されているZnDTP （Zinc Dialkyldithiophosphate）は，DLC 膜の摩擦摩耗特性に影響をもたらすことが知られている．通常，エンジンオイルには，数種類の添加剤を調合して使用するため，作用メカニズムの異なる添加剤が混在した場合に，トライボ特性に及ぼす影響を把握する必要がある．本研究では，水素フリーDLC 膜の摩擦摩耗特性に及ぼす添加剤の影響を明らかにすることを目的に，GMO を代表とする3 種類の無灰系FM と極圧剤であるZnDTP を併用することで，トライボ特性への添加剤の複合効果を調べた．