各種リン系化合物とMoDTCおよび金属系清浄剤の併用によるトライボロジー特性

摘要

自動車用エンジン油には長寿命化や摩擦摩耗特性の向上を目的として様々な添加剤が使用されている．中でも摩耗防止剤としてジアルキルジチオリン酸亜鉛（ZDDP）は，長年必要不可欠な添加剤として使用されてきた．さらに近年では，ZDDPに代わり硫黄を含まないジアルキルリン酸亜鉛（ZDP）やこれら二つの中間構造を持つジアルキルモノチオリン酸亜鉛（ZDMP）が開発，実用化されている．また，今日，省燃費性エンジン油において優れた摩擦低減効果を発揮する添加剤として，モリブデンジチオカーバメイト（MoDTC）が使用されている．この優れた効果は，MoDTCが摩擦面で分解反応し，層状の構造を持つMoS_２の潤滑膜を形成することに起因すると考えられている．一方で，エンジン内部を清浄に保つために金属系清浄剤も使用されており，一般的に炭酸Caサリシレート（CC-SA）や炭酸Caスルホネート（CC-SU）が多用されているが、ホウ酸Caサリシレート（CB-SA），ホウ酸Caスルホネート（CB-SU）も実用化されている．こうした添加剤は，油中に共存した場合，特異なトライボロジー特性を示すことが多い．そこで本研究では，これら添加剤を併用した場合のトライボロジー特性について検討した．