銅充填PTFE材料を用いた低面圧しゅう動面における境界潤滑メカニズムに関する研究

摘要

工作機械のすべり案内面のような低面圧条件において，オレイル酸性リン酸エステル（以下OLAP)を添加した潤滑油を用いた場合，一般に境界潤滑域とされる低速域で摩擦係数の強い速度依存性が発現し，摩擦係数が著しく低下することが報告されている.この特性は，摩擦面にOLAP由来の粘ちょう物質が形成されることで発現すると考えられている.工作機械のすべり案内面ではこのように低摩擦を示す潤滑油を用いて高精度を実現している.また，しゅう動材料として多くの工作機械のすべり案内面では銅充填PTFE材料が用いられている.これによりさらなる低摩擦が得られることが知られているが，そのメカニズムは解明されていない.一般に，PTFEと金属がしゅう動した際に，金属面にPTFEが移着層を形成することでせh断抵抗が小さくなり，低摩擦となるといわれている.しかし，既報において工作機械のすべり案内面では，添加剤分子の吸着によってPTFEの移着が阻害されており，一般に言われているPTFEの低摩擦発現メカニズムとは異なる低摩擦発現メカニズムが存在することが示唆された.銅充填PTFE材料に含まれる銅は，一般に耐摩耗性を高めるために入れられている.しかしながら，PTFEと比較して縦弾性係数が高いことから，PTFEに混入されることで接触部の荷重方向剛性を大きく向上していると考えられ，その結果PTFE部分の接触面積を制限していると考えられる.そこで本研究では，OLAP 添加油を用いた際に銅充填PTFE材料が工作機械のすべり案内面のような低面圧すべりにおける境界潤滑メカニズムの解明を目的とし，単一材料毎の境界潤滑特性を実験的に調査した.