植物由来ポリアミド系エラストマーのトライボロジー的性質

摘要

熱可塑性エラストマー（TPE）は室温でゴム弾性を示し，かつ熱可塑性樹脂と同様なプロセスで生産でき，コストも低く，易リサイクル性などの特徴を有することから現在，自動車部品や医療品など様々な用途で使用されている．特に，燃料ホース，輸液チューブや靴底材などの用途には，ポリアミド系エラストマー（TPAE）が多用されている．しかしながら，TPAEをはじめとした高分子材料の多くは石油などの化石燃料を原料として精製されており，それら石油資源の枯渇や二酸化炭素排出などが問題視されているのが現状である．近年，これらの解決策として，植物由来のバイオマス系高分子材料を用いた環境負荷低減材料が開発され，様々な用途に向けて研究されている．TPE系においても，ポリウレタン系（TPU）やTPAEなどの植物由来材料が開発されており，その中でも，ポリ乳酸（PLA）をハードセグメントとしたPLA系エラストマーが製品に応用されているが，PLAは可食植物から精製されるため食用との需要競合という問題がある．そのため現在，非可食植物であるトウゴマ由来のひまし油から精製されるポリアミド11をハードセグメントにしたポリアミド11エラストマー（PA11E）は，新規材料として非常に注目を集めているものの，PA11Eのトライボロジー的性質に関する研究や，既存の石油由来のTPAEとの比較検討を行った研究はほとhどないのが現状である．本研究では，新規TPE系トライボマテリアルの開発を目的として，植物由来材料の1種であるポリアミド11エラストマー（PA11E）のトライボロジー的性質について，無潤滑および油潤滑下などの各種条件下で実験的に検討した結果を報告する．