漆を用いた摺動材料の摩擦·摩耗特性に関する研究(ドライおよび水潤滑における評価）

摘要

樹脂すベり軸受は，機械の回転部や往復運動部を無給油で支持できるため，広く用いられている.この樹脂すベり軸受は，ベース材料として熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂を用い，それに固体潤滑剤を混合して製作している.食品加工機械用の樹脂すベり軸受には，低摩擦特性や耐摩耗特性に加えて，運転中に人の健康を害する可能性がある物質が溶出しないことや，装置洗浄時に使用される洗浄剤に対する耐薬品性が求められる.現在その役割を担うものとしては，PTFE,ポリアミド樹脂，ポリアセタール樹脂などがあるが，PTFEは耐摩耗性に劣り，ポリアミド樹脂は耐薬品性に劣る.また，ポリアセタール樹脂は，製造過程で含まれるホルムアルデヒドが溶出する可能性があり，いずれのしゅう動材も，要求を完全に満たしていない.そこで，上滝らは，樹脂材の中でも硬度が高く，耐薬品性に優れる材料として，天然樹脂である漆に着目して，漆に固体潤滑剤を添加した樹脂すベり軸受を提案し，その摩擦·摩耗特性をドライ条件において評価した.本研究においては，この漆およびそれに固体潤滑剤を混合したしゅう動材の摩擦·摩耗特性を，食品機械において想定されるドライおよび水潤滑環境において評価した.