表面に微細凹凸をもつシリコーンゴムシートの滑水性 (第1報,固液界面の接触面積と静止摩擦抵抗）

摘要

ハスの葉の表面は微細な凹凸におおわれているため水をはじき泥とともにすべり落とすことができる.これをハスの葉効果もしくは超はっ水性という.超はっ水性を示すものとしてハスの葉の他にバラの花びらがある.ハスの葉表面の水滴はよく転がり落ちるのに，バラの花びら表面の水滴は超はっ水性を示すにも関わらず花びらを逆さまにしても落ちないほど付着力が強い.これを花びら効果と呼ぶ.固体表面のはっ水性の基本的な考え方についてはWenzelやCassieらによって確立されている.しかしながら水滴除去性については未解明な点が多く，上記バラの花びらの例のように良好なはっ水性を示すにもかかわらず水滴除去性が悪いことは珍しくない.超はっ水性をもつ固体表面については多くの研究があり，超はっ水性表面を開発する様々な方法が提案されている.超はっ水性表面の応用展開についても，様々な分野への応用が検討されている.しかしこれらの実用化は十分になされているとはいえない.その理由は必要とされている性能がはっ水性ではなく水滴除去性すなわち表面と水の滑りやすさ（動的はっ水性)であること，大きな面積に適用する際の経済的な問題，超はっ水性表面の耐久性の悪さ，特に表面の微細な凹凸形状維持が困難なことにある.これまでに筆者らは，配管の輸送動力低減や着雪·着氷対策などへの応用を目指し，様々な用途に対応できるよう溶媒選択性が広い，汎用性を高めるため安価な方がよい，成形加工が容易である，などの点を考慮して母材としてシリコーン樹脂を用い，また配管への応用の際の大面積化を想定して微細な凹凸形状の付与方法としてインプリント加工を選択した.そしてシリコーン樹脂を基材としたシートにインプリントによって微細な凹凸形状を付与することで超はっ水性に近い特性を付与し，その表面の水滴の動的はっ水性が向上することを見出した.本報告では，シリコーン樹脂シートの表面にインプリントによって付与された表面パターンにより水滴の動的はっ水性が変化する原因について水滴の接触角ヒステリシスから静止摩擦抵抗を求め，検討した結果について報告する.