新規硫黄化合物の潤滑特性

摘要

切削油やプレス油などの金属加工油では，厳しい条件において塩素系極圧剤を配合した加工油が用いられてきた.しかし，近年では環境配慮の観点から硫黄系極圧剤を中心とした配合に置き換えが進hでいる.こうした背景から硫黄系極圧剤の潤滑機構に関する研究が盛hに行われている.著者らはこれまで硫黄系極圧剤の分子構造と塑性加工における潤滑特性を明らかにするため，様々な研究を行ってきた.その結果，分子構造と性能の間には密接な関係があることを明らかにした.一方で辻本らは硫黄系極圧剤の分子構造と切削性能の関係を調べ，硫化オレフィンよりも硫化エステルの一つである硫化オレイン酸メチルの方が加工性能に優れることを報告している.本研究では，硫化エステルの最適構造探索を目的にして新たに合成した2種の硫化エステルの切削性能を評価した.さらに，これら硫化エステルの潤滑機構の解明のため，切り屑の表面分析を行った.