北米の軽油スラッジから採取した酢酸菌の有機溶媒資化性

摘要

北米では2007年に超低硫黄軽油（ULSD）に切り替えられて以後，貯蔵タンクに腐食が相次いでいる．貯蔵タンクのスラッジに棲息する酢酸菌が軽油中に混入したエタノールを資化し酢酸を生成させることが原因とされている．北米を走行したトラックの燃料タンクより回収したスラッジからGluconacetobacter liquefaciensを検出し，この菌の性状を調査，報告したが，有機溶媒資化性の検討までは至っていなかった．そこでこれまで用いてきたNBRC804培養液よりGlucoseを抜くとともに，濃度を1/10とした稀薄培地を用いて，有機溶媒の代謝能を調査することとした．このことで，北米で起きている腐食現象の理解を深めると共に，環境問題から広まりつつあるULSDが他地域にて腐食をもたらす可能性の有無を論じるときの一助としたいと考えた．