水素添加した焼戻しマルテンサイト鋼の擬へき開破壊から粒界破壊の遷移過程における結晶学的解析

摘要

焼戻しマルテンサイト鋼の代表的な水素脆性破壊として，粒界破壊と擬へき開破壊が知られており，従来からTEMやEBSDなどを用いた破面解析により，それらの成り立ちについて多くの直接的な証拠が得られてきた．しかし，水素脆性破壊といっても，粒界破壊と擬へき開破壊を明瞭に分離できることはなく，両者の遷移過程には，ファセット上に多くのティアリッジパターンを有する中間的な破壊も存在する．そこで本研究では，このような破壊を擬粒界(IG-like)破壊として，各種破面のSEM観察，破面上の直接EBSD測定，側面からのトレース解析および三次元化した破面の断面曲線分析を通じた比較によって，それぞれの遷移状態を調査した．