鉄板-人工FeOOHさび粒子界面でのマグネタイトさびの生成挙動の検討

摘要

鋼材の大気腐食により生成するFeOOHさびの構造は，暴露環境に依存し，工業地帯ではα－FeOOHやγ-FeOOHが，沿岸部のような飛来塩分環境下ではβ-FeOOHが主に生成する。FeOOHさびは夜間のような湿潤状態では，鋼材から溶出したFe~(2+)と反応し，Fe_3O_4さびに還元される（Fe→Fe~(2＋)＋2e~-，Fe~(2＋)＋8FeOOH＋2e~-→Fe_3O_4＋4H_2O）。さらに，日中ではFe_3O_4さびは，大気中の酸素および水蒸気と反応し，FeOOHさびに酸化される（3Fe_3O_4＋3/4O_2＋9/2H_2O→9FeOOH）。このような乾湿繰り返しによる鉄さび粒子層の成長は，Evansモデルとよばれている。一方, Fe_3O_4さびの生成に対するFeOOHさびの構造の影響について，我々は水溶液中で鉄粉と人工FeOOHさび粒子からFe_3O_4さびを調製することで検討し，Fe_3O_4さびの生成はβ－FeOOH＞γ－FeOOH＞α－FeOOHの順に促進すると報告した。しかし，この方法は水溶液中での反応であるため，鋼材の大気腐食機構を検討することは困難である。そこで本研究は，人工FeOOHさび粒子の懸濁液を鉄板に塗布し，飽和水蒸気圧下で処理することで，Fe_3O_4さび粒子の生成挙動を検討した。