自然海水中におけるSUS304の長期動的すきま腐食観察－すきま腐食進展性の動的観察（9）

摘要

我々は，これまで自然海水中におけるステンレス鋼の耐すきま腐食性を実験室で評価することを目的として，種々の電気化学測定と連動したすきま内腐食部の In-Situ マクロ観察を中心にすきま腐食進展挙動を研究してきた．例えば，図1（a）に示すように自然海水中に浸漬されたSUS304の自然電位は，電位貴化途中の段階で電位の卑化現象が観察され，それ以降，比較的卑な電位を維持するという特徴ある挙動を示すが，この結果から，より現実に近いすきま腐食挙動を再現するために前報 において一旦，貴な電位（E_1と呼ぶ）で試験片を定電位的に保持し，すきま腐食を強制的に発生·成長させたあと，E_1より卑な電位（E_2と呼ぶ）で定電位保持をおこなう「二段定電位法」という独自の評価方法を検討してきた．しかし，実際の自然海水中において，SUS304がどのようなすきま腐食進展挙動を示すのかはこれまで不明な点が多かった．本報告では上記の未解明点を明確にするべく，新たに導入した自然海水用の「動的すきま腐食観察装置」を用いてすきま腐食のIn-Situマクロ観察をおこなった結果および実験室で得られた「二段定電位試験」による同結果とを主として腐食面積の観点から比較した内容について述べる．