開水路における2 種類の波状形状をもつ底面の乱流抵抗低減に関する実験的研究

摘要

近年，化石燃料の枯渇や地球温暖化の進行に伴い，その解決策の一つとして省エネルギー技術が注目されている．省エネルギー技術は化石燃料の消費量を削減し，温室効果ガスの発生を抑制することができる．これまで提案·検討されてきた省エネルギー技術の中でも，社会的インパクトの高いものの1 つとして，摩擦抵抗低減がある．減エネルギー化の観点から，流体による乱流摩擦抵抗低減が強く求められている．例えば大型船舶は全抵抗の多くを摩擦抵抗が占めるので，わずかな摩擦抵抗低減でも燃油消費の削減になる．また配管系の摩擦抵抗低減はポンプ動力の大きな削減になる．したがって，研究が盛hに行われている．筆者らの研究グループでは，大型水棲生物から着想を得た摩擦抵抗低減法の可能性を検討している．イルカは高速で泳ぐ際にのみ，腹部付近にしわが発生する．Zhang らは，開水路乱流中においてイルカの腹部のしわを模擬した稜線が主流方向と直角でない正弦波状の断面を持つ試験面を作成し，その上を過ぎる流れ場の速度計測を行い，摩擦抗力の低減を確認した．吉竹らは，試験面にかかる全抗力の計測方法を考案し，全抗力と摩擦抗力の差から圧力抗力を算出した．その結果，平板と比較して摩擦抗力が低減し，圧力抗力が増加する結果を得た．そこで本研究では，摩擦抵抗低減効果を得ながら，波状面で圧力抗力が増加する原因である波状上り坂部に衝突する流れを抑制するために，テストプレート前縁部に緩やかな上り坂を設ける．その緩やかな上り坂が生む平行流が下流側の波状面に及ぼす影響を調べ，それをもとにテストプレートを作製する．このテストプレートの速度計測と全抵抗計測を行い，緩やかな上り坂の有無での抗力の違いとそれがどのようなメカニズムによって生じたのかを調査する．