平面ポアズイユ流の亜臨界遷移における下臨界レイノルズ数

摘要

直円管内や平行平板間の乱流遷移は，有限撹乱を種としてストリーク構造や準縦渦構造を連鎖的に生み出しつつ乱流域が成長する，いわゆるバイパス遷移を経る場合が多い．本研究対象の平面ポアズイユ流に限れば，線形安定性理論による臨界値Re_c = 5772 （Recはチャネル中心速度，チャネル半幅δ，及び動粘度に基づく）よりも低いレイノルズ数でバイパス遷移を経て乱流が維持することは公知の現象である．この亜臨界遷移の下限レイノルズ数（下臨界値）については実験的に1000 程度とされてきた．しかし，近年の数値計算や実験により，Re_c < 2500 では乱流域が局在化され，大規模な縞状または帯状の構造を呈することが報告されている．下臨界レイノルズ数付近の乱流斑点成長においても，主流方向に対して一定方向に傾斜した帯状の斑点に成長する現象を確認している．この局在乱流の帯（turbulent band）に沿って大規模な流れ（large-scale flow）が伴うため，亜臨界遷移のメカニズムについては局所のみならず大域的安定性（global stability）を考慮する必要がある．本研究では，turbulent band とlarge-scale flowを捉え得る大規模な計算領域を用いてDNS（直接数値計算）を実施し，平面ポアズイユ流の亜臨界遷移の下臨界レイノルズ数を調査し，壁乱流のglobal stability について考察する．