毛細血管網の分岐形態が微小循環の輸送特性に与える影響

摘要

自然界で形成される形状は複雑な構造の中にも普遍的なパターンを有することが多い．植物の枝や葉脈，河川，生体内の血管網はフラクタル構造によって特徴付けられ，その自己相似的な分岐パターンによって，少ないエネルギー損失において物質輸送を高効率化しているものと予想される．例えば，生体内に形成される血管網は，心臓を駆動源とし，組織内に酸素や栄養分を供給すると共に老廃物を除去するためのパイプラインの役割を果たしている．Murrayは最小仕事の概念に基づき，血管が分岐する際には，親管と娘管の半径の3乗の和が等しい時にポンプ動力が最小になることを示した．実際，生体に見られる様々な分岐構造において，Murrayの法則が良く成立することが確認されている．