Stochastic Rotation Dynamics 法を用いた走光性微細藻類分散系の流路内流れの数値解析

摘要

微細藻類は，0.5μmから数百μm程度の大きさの走光性を有する微生物であり，環境の光度に応じて能動的に運動する．微細藻類は，工業的には，健康食品やサプリメントの原料，レアメタルの回収，バイオ燃料の生産に用いられている．バイオ燃料の生産においては，その生産効率は穀物を原料とする場合よりも高く，また，カーボンニュートラルなエネルギー資源への要請から，第３世代のバイオ燃料原料として注目を集めている.微細藻類を原料としたバイオ燃料生産過程では，レースウェイ型水路や円管型のフォトバイオリアクターが利用されるため，それらの流路内の微細藻類分散系の流動挙動の理解は，生産プロセス設計に有用な情報を与える．また，微細藻類の分散系は，自ら運動することが出来る能動粒子の分散系であり，複雑流体としての流動特性や流動誘起構造，レオロジー特性は，従来の受動的な粒子の分散系とは異なる特性を示すことが予想され，複雑流体力学·非ニュートン流体力学の観点からも興味深い対象である．そこで，本研究では，微細藻類分散系を走光性を有する能動粒子としてモデル化し，それらを水中に分散させた分散系の流路内流れを数値計算し，その流動挙動を解析した．ここでは，Stochastic Rotation Dynamics（SRD）法により，溶媒を仮想粒子の集合として表現し，そこに走光性能動粒子を分散させた系の流動を計算した．走光性の表現にはGhoraiとHillが用いた方法を適用した．そして，２次元平行平板間の圧力駆動流れに片側から光照射をした場合の微細藻類分散系の流れの計算を行い，速度場や濃度分布に対する照射光度の影響を調べた．