走行する自動車群の流体力学的効果を再現するためのCFD サブモデルの開発（その1）自動車模型を対象とした風洞実験との比較とモデル係数の最適化

摘要

近年、歩行者空間等のような屋外生活空間の温熱·空気環境の悪化は大きな問題となっており、CFD 解析を利用した検討事例が増加している。従来の市街地の風環境、温熱·空気環境のCFD 解析では、地形や建物の幾何学的形状のみが計算で再現されるのが通例であったが、実際の市街地では、街路樹や看板、電話ボックス、あるいは自動車、自転車、歩行者等のような様々な障害物が存在し、気流分布、乱流拡散に影響を及ぼす。これらの幾何学的形状を逐一計算グリッドで再現して解析を行うことも不可能ではないかもしれないが、計算コストを考えると賢い選択とは言えない。そこで近年は、これら気流障害物を計算グリッド内に存在する抵抗体として捉え、その流体力学的効果を表現する項を基礎方程式に付加するというアプローチの研究が数多く行われている。このようなアプローチに基づくモデル化の方法はCanopy モデルと呼ばれ、樹木Canopy、建物Canopy等の静止物体の効果については既に多くの研究の蓄積があるが、移動物体の効果のモデル化に関する研究は少ない。本研究は、移動物体の中で歩行者空間の風環境、温熱·空気環境に影響を及ぼす最大の要因である自動車群の路面付近の気流分布への影響や乱流混合の増大、これに伴う汚染ガスや熱拡散の促進の効果等を再現するためのCFD サブモデルの構築を目的としている。