境界の温度分布により誘起される高度に希薄な気体の定常流

摘要

一方，希薄度がさらに大きくなり，分子同士の衝突が無視できる自由分子気体になると，物体の温度分布にかかわらず流れは起きないことが数学的に証明されている.つまり，温度場による流れは希薄気体に特有の現象であるが，希薄度が大きくなる極限では消滅するのである．ただしこの証明では，物体面上において，気体がマクスウェル型条件と呼ばれる簡便な境界条件に従うことを前提としている[無限領域を考えるときは，無限遠方での状態にも一定の制限が課せられる; 詳しくは文献を参照]．従ってそれ以外の境界条件を適用した場合に，自由分子気体に流れが誘起されるのかどうかは定かではない．本稿では，次節で設定する問題の数値解析を行い，温度場によって自由分子気体に流れが生じることを具体的に示す．