エンジンシリンダライナの切削加工における温度上昇と切削力が加工精度へ及ぼす影響

摘要

高い生産効率が求められている自動車エンジンシリンダライナの加工では，荒ボーリング加工，ファインボーリング（以下ＦＢ）加工，荒ホーニング加工，仕上げホーニング加工の順で加工するのが一般的である．そこで，ＦＢ加工の加工精度が向上することにより荒ホーニング加工工程を削減できれば，時間とコストの低減につながる．一方，エンジンシリンダライナの加工精度を低下させる要因として，工具やシリンダライナの熱膨張，切削力による弾性変形，工作機械の剛性の不足，鋳造時の残留応力による変形などがある.これらが複雑に絡み合い真円度，円筒度を低下させる.そのため，ＦＢ加工において高加工効率と高品質を実現するために，熱膨張と弾性変形による加工誤差をそれぞれ定量的に明らかにする必要がある．これが可能となれば，最適な加工条件が設定できると考えられる．さらに，実加工誤差のうち，熱膨張による加工誤差と弾性変形による加工誤差の寄与割合を解明することができれば，加工精度向上に必要な加工条件選定の方向性を決定することができると考えられる．これより，開発時間短縮，コスト削減などの効果が期待できる．そこで，本研究では，エンジンシリンダライナ加工中に発生する熱膨張と弾性変形による加工誤差をそれぞれ定量的に解明し，加工誤差と加工条件との関連を明らかにすることを目的とする．