摩擦力変化に対応可能な象限突起補正方法に関する研究

摘要

工作機械では，二つの直進軸を同時に制御して円運動を行わせ，JISB6194に規定されているように運動性能の評価を行う．実際に円運動を行うと，各軸の運動方向反転時には送り駆動機構に発生する摩擦力の影響によって運動軌跡に大きな誤差が生じる．この誤差は半径方向に拡大すると突起状になることから，象限突起と呼ばれる．この象限突起の発生は実際の加工時にも筋状の跡となって残るため，加工精度の低下する原因のひとつとなっている．象限突起は，制御系に摩擦補償器を組み込むことで抑制できることが確認されている．しかし，送り駆動機構の摩擦力は繰返し性がなく変化するため，向心加速度に対応して補償値を算出するような摩擦補償器では，繰り返し，象限突起を完全に抑制することができない．摩擦力が変化する要因として，円運動を行う位置，負荷重量，経年変化など考えられる．本研究は，摩擦力変化に対応して象限突起を補正する方法の開発を目的としている．そのために１台の機械で象限突起の繰返し性について調査した．また，象限突起高さの変化に対応可能な制御方法を開発し，シミュレーションと実験とから送り駆動機構内の摩擦力が変化しても象限突起の補正ができたので報告する．