絶縁性Si_3N_4セラミックスのワイヤ放電加工特性-加工メカニズムの推定

摘要

ワイヤ放電加工法は，他の加工手法では困難であるような複雑形状加工を容易に実現することができるため，様々な分野で利用されている．さらに近年では，補助電極法を適用することで，絶縁性セラミックスに対するワイヤ放電加工も実現し，その適用範囲の拡大が予測される．補助電極法は，加工対象となる絶縁性材料の表面をあらかじめ導電性の材料で被覆し，基本的に被加工物側の極性をプラスとして油中にて加工を行う．加工の進展に伴い，絶縁性である被加工物の表面に高抵抗の導電性の被膜が形成され，加工を継続させることが可能となる．このように，補助電極法を適用して絶縁性材料に対する放電加工を行う場合，通常の金属に対する放電加工とは加工原理が異なり，加工（被加工物の除去）を行いながら，次の放電につながる導電性被膜を形成させるプロセスが必要となる．導電性被膜の形成には長パルス放電と呼ばれる設定のパルス幅以上の放電が継続する，特殊な放電波形が大きな影響を及ぼしていると考えられている．しかしながら，この長パルス放電は，被加工物の抵抗が高い場合に発生する特殊な放電であるため,市販の放電加工機ではその発生を想定しておらず制御することが出来ない.そのため，絶縁性セラミックスの放電加工における加工メカニズム推定に市販の放電加工機を適用することは困難である.そこで本研究では，絶縁性セラミックスの放電加工における加工メカニズムの推定を目的とし,機構および制御回路を任意に変更することができる研究用のワイヤ放電加工機を開発し，加工中に発生する長パルス放電のパルス幅に制限を設け，絶縁性Si_3N_4 セラミックスに対して放電加工を行った．