紙幣識別3D MEMSスキャナ－基礎特性から判別まで

摘要

紙幣識別装置が搭載される自動販売機は，平成16年現在で554万台余りが国内に設置されている．その識別方式の多くは紙面を透過もしくは反射する光強度パターンそして磁気インクを検出するものである．これらの方式は十分な精度が得られないため，偽造紙幣が真紙幣と誤認識されるケースも少なくなかった．このような事態が生じた背景は，くしくも我々の日常生活では欠かすことのできなくなったカラー複写機やプリンタなどの高精細と高品位化にある．（注：現在は多くの複写機にコピー防止機能が搭載されている．）特に平成14年頃から偽造紙幣の摘発が急増し，平成16年には25,858枚の偽造紙幣が発見されている．この事態を重く見た日本政府は偽造防止を第一の理由に偽造困難な要素を盛り込hだ新紙幣の投入を平成16年末に実施した（図1参照）．その偽造防止技術には，ホログラム，深凹版印刷，特殊インク，すき入れ，マイクロ文字などがある．我々の研究グループは，新紙幣に組み込まれた偽造困難な各要素技術に注目し，モアレ法によるマイクロ模様の検出，パターン投影法による紙面の微小凹凸の検出，再生光パターン認識によるホログラムの真偽判定そして特殊インクの検出を行う紙幣識別専用の小型センサーを開発してきた．我々はこれらの要素技術の中で深凹版印刷に注目し，３次元形状測定による紙幣識別センサーを開発してきた．また，新しい光パターン投影システムとしてMEMSプロジェクタを開発した．本研究ではCCDカメラと組み合わせた3D-MEMSスキャナを用いて紙幣の深凹版印刷部の3D形状計測を行ったので結果を示す．