圧粉時の密度差を利用した積層圧粉法による超硬モデルの成形

摘要

近年，生産現場では市場競争の観点から多品種少量生産に向けた製品製造期間の高速化ならびに省力化技術の開発が望まれている．そこで本研究では，実用的な機械強度および形状精度を有する金型や金属製品(セラミックス製品)の自由形状成形を目的とした，「粉末積層圧粉法」を提案するとともにその実用化を目指している．本法は，薄板状に圧粉した粉末上にフライス加工でモデルの断面軌跡に相当する溝(境界溝)を形成しながら順次積層·圧粉を繰り返すことによって三次元形状を得るという手法である．これまで，材料にWC-9mass%Co 超硬粉末を用い，積層過程で境界溝内に低融点のパラフィンワックスを境界材として充填することにより，実用的な強度を有しかつ従来の切削加工などでは作製が困難な内部構造を持つ複雑なモデル形状の一体成形が可能であることを報告している．また，プロセスのさらなる簡便化·効率化を目的に，境界材を用いない方法についても検討を行っている．これは溝を形成した圧粉体上に次の層の粉末を充填·圧粉した際，溝内部が低密度かつ低強度となることを利用した方法である．既報では材料に銅粉末を用い，圧粉過程で生じる密度分布と境界溝形状の関係を有限要素法により解析し，積層終了後に溝に沿ってモデルの分離が可能な積層条件を明らかにした．本報では密度差を利用した造形法による超硬(WC-9mass%Co)モデルの作製の可能性について検討したのでその結果について報告する．