高性能永久磁石材料開発における磁気計測と展望

摘要

永久磁石材料はモーター及び発電機の高効率化技術における主要機能材料のひとつであり、高い残留磁束密度(B_r)とともに、減磁界に抗して残留磁化を維持するために高い固有保磁力(H_(cJ))を持つことが要求される。また、実際の使用に当っては減磁曲線（J-H曲線、および、B-H曲線）の形状が重要であるばかりでなく、磁石部材内での減磁曲線の分布までが性能仕様に求められる場合もある。さらに、より高性能な永久磁石材料を実現するためには、主相となる対象物質の飽和磁化(J_s)、異方性磁界(H_A)、キュリー温度(T_C)などの固有磁気物性値だけでなく、高い保磁力を発現させるために必要な粒界物質など副相の固有磁気物性値、および、保磁力と材料組織とを関連付けて組織最適化への指針を獲得するための磁区構造観察と解析が重要である。このように、永久磁石開発における磁気計測といっても対象範囲はFig.1に示すように非常に広い。しかし、高性能永久磁石の研究開発にとっては材料の組織と磁気特性との関係を徹底的に解析し、性能向上および新規材料開発のための手かがりをつかむことが磁気計測の主たる目的であるので、本稿では、高性能永久磁石の研究開発での必要性が引き金となって近年長足の進化を遂げた磁気計測技術が高性能永久磁石材料の開発に用いられた実例とともに、磁区観察やマイクロマグネティックス·シミュレーションなどを使った解析などについて、最近の研究動向を紹介し、今後の展望について論じる。