高精度な自動車の磁場変動の予測手法の検討（その１零磁場空間での擾乱磁場分布測定）

摘要

各種自動車の移動に起因する磁場変動の範囲を定量的に予測するため、自動車周囲の擾乱磁場分布を測定し、磁化された磁性体の向きを推定してきた。しかし通常の地磁気環境下において測定をする場合、地磁気の時間変動や周囲の建物等の磁性体に起因する空間的な勾配磁場により、静磁場の測定結果から差し引く地磁気の値が各測定点で一定でないために、精度良く磁化M（磁気双極子）の大きさ、方向を推定することが困難であった。そこで本研究では、独立行政法人宇宙航空研究開発機構の零磁場空間内で、磁化された磁性体の磁気双極子の向き、大きさを高精度に推定することを目的に、自動車周囲の擾乱磁場分布の測定を行なった。この零磁場空間は、非磁性体で構成された磁気試験棟内に設置した3軸ブラウンベックコイルで地球磁場を打ち消し、変動磁場、勾配磁場の人工擾乱に対して離隔距離を確保し、その影響を低減させている。そのため、材料の応力歪みや扉の影響により磁場分布が乱される強磁性体磁気シールドルームに比べて、中心の直径2.3m球の内で勾配が南北，上下方向とも数nT/m以下と小さく、供試体の擾乱磁場が強磁性体により分布が乱される懸念もなく、自動車のような大きな供試体も容易に搬入できる。