ペダル踏み間違い事故の低減における左足ブレーキ操作の有効性について(第2報）

摘要

1990年代にはMT車に比べてAT車は割高で燃費も悪く，車種によってはATの設定がないなど，AT車の普及がゆっくり進hでいったが，近年のAT技術の進歩や価格の低下，そもそもMT車を販売する設定がないなどが理由となり，現在販売されている乗用車の多くがAT車となっている.また，AT 車の普及に伴い1991年に導入されたAT限定免許制度に則って自動車運転免許を取得する割合は年々増加し，2014年度の新規の普通自動車免許（第一衝)の合格者の内55%がAT限定免許を選択しており，このAT限定免許を取得すると左足を使う運転経験をすることが無い.自動車の基本性能である「走る」，「曲がる」，「止まる」の内，その「止まる」をブレーキペダル，「走る」をアクセルペダルが担っており，「隣同士に配置され，排他的に右足によって操作される」ということでその安全性を担保している.MT車を運転する場合は，ブレーキペダルやアクセルペダルの操作に伴って左足を使ったクラッチ操作が必要となるが，AT車にはこの操作が不要であり，このように操作が容易になることもAT車におけるペダルの踏み間違いによる事故の原因となっている.ペダル踏み間違え事故は，年間6千～7千件程度発生しており，事故全体の約1%に相当する.年齢層別·性別の免許保有者数あたりペダル踏み違え事故発生率を図1に示す.発生率は，若年層である24歳以下と70歳以上が全体平均を上回っている.ペダル踏み間違え事故による運転者の死亡率は3.44%であるのに対し，全事故では0.17%であり，事故全体と比べると運転者が死亡する重大事故になりやすい.