自動車乗員の早期治療·最適治療を目的とした傷害部位別アルゴリズムの構築

摘要

我々はこれまで，自動車に搭載されたEDR（Event Data Recorder）の事故記録より得られる情報から，傷害程度を予測する傷害予測アルゴリズムを交通事故統計のマクロデータを用いて開発した．まず，自動車乗員のうち運転席乗員のみを対象とした研究を実施し，軽傷·無傷に対して死亡·重傷となる確率（死亡重傷率）を算出する傷害予測アルゴリズムを構築した．その後，日本の交通事故死者の多くを占める歩行者や自転車乗員を対象とした傷害予測アルゴリズムを構築することで，傷害予測の対象範囲を拡大した．さらに前報では，自動車乗員のうち助手席と後席の乗員を傷害予測の対象とするために，乗車位置別アルゴリズムを構築した．この乗車位置別アルゴリズムでは，運転席乗員の無傷データを除くことで運転席と助手席·後席乗員を受傷者に統一した．傷害予測アルゴリズムは先進事故自動通報システムAACN（Advanced Automatic Collision Notification）での運用を想定しており，自動通報された事故情報を基に死亡重傷率を算出する．重傷と予測された場合には，ドクターヘリ等で医師を現場派遣することで早期治療が可能となり，救命率の向上に期待できる．