Knuth·Dekker のアルゴリズムに基づく無誤差変換を用いた精度保証付き数値計算パッケージの開発

摘要

現在主流となっている精度保証付き数値計算の手法は，真の値を包む上限と下限をCPU の丸めモード変更を利用した浮動小数点演算により計算しようというものである．このような考え方は区間解析と呼ばれ，区間を数の拡張と考えその四則演算が定義される．これを区間演算といい，区間演算を浮動小数点数システムの上で展開するものを機械区間演算という．ここで，CPU の丸めモードを変更するには，コンピュータに特殊な命令を実行させる必要がある．そのため，CPU，OS，コンパイラ毎にプログラムを作成する必要があり，プログラムを変更すると全ての種類のプログラムを再構築しなければならない．本研究では，Knuth[2] とDekker[3] のアルゴリズムに基づく無誤差変換による精度保証付き数値計算パッケージをJava を用いて開発した．Java で無誤差変換を実装することで，環境に依存しない区間演算を実現し，高精度な精度保証付き数値計算パッケージの開発が可能となった．また，極配置法を例題として本研究で実装した手法とCPU 丸めモードの変更による手法とを比較および評価した．本研究ではIEEE754 規格に基づく倍精度2 進浮動小数点数を用い，最近点への丸めを前提として考える．