数理解析技術の産業応用：IBMのビジネス戦略と最近の研究事例

摘要

数理解析は、物理学や化学のように扱う対象を限定することなく、主要な記述手段として数学を用いて、研究対象の性質を明らかにする学問分野である。もともと現代的意味での学問が、欧州を中心としたキリスト教的世界観の探求という文脈で生まれてきたがゆえ、非自然を相手にする学問の歴史が比較的浅いのは当然である。それでも、数理解析というカテゴリで呼ばれる学問分野のうち、制御工学とオペレーションズリサーチはそれぞれ半世紀以上の歴史を持ち、産業上不可欠の地位を占めている。たとえば、自動車のエンジンの設計においては、システムの同定と制御は欠くことができないステップであり、航空業界では、航空機の配置や乗務員のスケジューリングを数理最適化問題として解くのはほとhど定石と言える。