高クロム耐熱鋼の溶接部の長時間クリープ強度と破壊

摘要

高Crフェライト系耐熱鋼（高Cr鋼）は，蒸気温度が約600°Cの超々臨界圧（USC)発電プラントで，主要高温構造部材として使用されている.高Cr鋼の母材および溶接金属は，クリープ強度の高いラスマルテンサイト組織を有している.しかし，溶接熱影響部（HAZ)には，溶接熱サイクルと溶接後熱処理（PWHT)により，ラスマルテンサイト組織が消失したクリープ強度の低い細粒HAZ組織が形成される.細粒HAZに沿って生じるクリープ破壊は，Type-IV破壊と呼ばれ，長時間使用される高温機器で問題となっている.著者らは改良9Cr-1Mo鋼（ASMEGr.91鋼）と溶接部のクリープ試験を継続して行い，最近では600°Cおよび650°Cにおいて，約30，000hから約70，000hの長時間クリープ破断データを得た.600°C，30,000 hで破壊した溶接継手では，クリープ損傷は細粒HAZだけでなく溶接金属にも観察された.母材は焼きなまし焼き戻し中に析出するM_(23)C_6炭化物およびMX炭窒化物によって強化されているが，溶接金属は異なる熱サイクルを受けるので，母材とは異なる組織をもつ.高Cr鋼の溶接金属クリープ特性は報告されているが，長時間のクリープ特はほとhど報告されていない.本研究では，10，000 h以上クリープした9Cr鋼の溶接金属の組織をEBSDやTEMにより調査した.また，長時間の再現HAZ材（細粒）と母材のクリープデータを用いて溶接継手のクリープ寿命の評価を行った.