ダクタイル鋳鉄（FCD600）の精密切削加工における工具摩耗特性の検討

摘要

近年，航空機，産業機械，自動車産業などの部品製造では，環境対応の重要性が増し，省エネルギーによる二酸化炭素排出量の削減や，環境負荷に関わる産業廃棄物の減少などが重要な課題となっている．難削材FCD600は，ダクタイル鋳鉄と呼ばれ，強度の必要な自動車部品（例：エキゾースト·マニュホールド）に多用されている．FCD600は引張強さが600N／mm~2以上と非常に高い強度を有するため，切削能率が低い，工具欠損が発生し易い，加工精度の確保が難しいなどの問題がある．このように，高い難削性を有する高強度材の切削能率向上に対する取り組みの一つとして，高圧クーラント加工が注目されている．しかし，高圧クーラント加工は多量の切削液を使用するため，切削液の処理コストや，消費エネルギーの増加，環境負荷などの問題がある．FCD600のような難削材の切削加工に，MQL（Minimum Quantity Lubrication）加工で切削を行うことができれば，環境負荷を低減することができる．そこで本研究では，MQL加工をFCD600などの難削材の切削加工に適用させることを目的としている．また，仕上げ工程のような高精度な切削加工を対象としたことから，目標値を表面粗さ3.2μmRzjis以下工具寿命は切削距離600mにおいて，直径の寸法公差25μmに相当する工具前逃げ面摩耗100μmとしている．