微分幾何法に基づいた三次元線状物体の動的変形形状予測

摘要

生産現場において，高速に変形する線状物体はよく見られる．たとえば，ロボットや工作機械の駆動系とともに変形する電線や，電線の組み立て時における高速マニピュレーションなど，様々な場面において線状物体が高速に変形されつつ使用されている．しかし，線状物体の変形形状は一般的に予測することは難しく，電線などの線状物体を含む製品の配索設計や，組み立て時のマニピュレーション経路計画は，人間の経験と勘で行われているのが現状である．線状物体の変形挙動を定量的に予測することができれば，これらの問題に対して支援が可能となる．そこで，本研究では動的に変形する線状物体の三次元形状予測手法の提案を目的とする．本手法は，微分幾何法に基づいて線状物体のモデル化を行い，線状物体の運動エネルギーおよびポテンシャルエネルギーを定式化する．また，線状物体の操作を行うために，線状物体の中心軸曲線上の任意の点における位置制約および姿勢制約の定式化を行う．さらに，Cosserat理論などを用いた線状物体は，離散化されて表現されているが，本手法で採用する微分幾何法に基づいた線状物体表現[1]では，後に述べる基底関数の選択次第で，滑らかな形状表現が可能である．