搭乗者の急制動動作による2輪立ち乗りPMVの制動挙動評価

摘要

近年，先進諸国における人口減少と省エネ·環境意識の高まりを受け，電動二輪車，シニアカー等1 人用の移動手段としてのパーソナルモビリティヴィークル(以下，PMV) の普及が期待されている．その中でも，車体のコンパクトさや重心移動による直感的操作性，取扱いの簡便さ等から2 輪倒立型立乗りPMV のような倒立振子の原理を利用したPMV が注目され，普及のための活発な研究開発が行われている．人が搭乗するPMV において，搭乗者や歩行者の安全を確保する制動手段に関する議論は極めて重要である．立乗りPMV では，搭乗者が体重を後方に移動して制動を行うため，歩行者の飛び出し等で車体を緊急に停止する場合，搭乗者は反射的な体重移動動作を取る．したがって，車体の急制動性能は，搭乗者の反射的急制動動作に大きく左右することになる．筆者らは，不安定搭乗部上における搭乗者の急速体重移動実験を実施し，危険認知後体が反応するまでの無反応時間を示すデッドタイム，足底COP を一瞬前方に移動する逆反応動作が存在することを確認した[3]．本稿では，同実験から観測されたデッドタイム及び逆反応動作が，PMV の制動性能に及ぼす影響を動力学シミュレータ及び簡易実験機を用いて確認した結果を報告する．