カートリッジ方式定常比較法による熱伝導率測定の適用可能範囲（熱伝導数値計算によるロッドおよび試験片からの熱損の影響解析と実測値との比較）

摘要

導電性接着剤やTIM（Thermal Interface Material）などの比較的熱コンダクタンスが大きい材料の熱伝導率測定法として開発されたカートリッジ方式一方向熱流定常比較法（以下“従来法”と称する）は，米国標準による一方向熱流定常比較法を発展させたもので，試験片の交換を容易にするために試験片をカートリッジ化しただけでなく，試験片周囲を断熱せずに測定することが特徴となっている．著者らはこれまで試験片周囲を断熱しないことによる試験片周囲からの熱損の影響を解析的に検討することにより，上下ロッドとカートリッジの温度測定値から熱伝導率を算出する式を改良し，従来法では測定できなかった試験片の熱コンダクタンスがより小さい試験片でも測定できることを実験的に示した．例えば，試験片を通過する熱流を修正する“熱流修正法”（Modified Heat Flow method：MHF法）では，熱伝導率が0.21W／m·Kと小さく，厚さ3mmと薄い試験片（熱コンダクタンスU_s＝70W／m~2·K）においても±10%以下の誤差で熱伝導率を測定できる．さらに試験片中の温度分布を直線近似ではなく，双曲線関数で近似した“温度分布修正法”（Modified Temperature Profile method：MTP法）では熱伝導率が0.21W／m·Kと小さくかつ厚さが20mmの厚い試験片（熱コンダクタンスU_s＝10W／m~2·K）でも±10%以下の誤差で測定できる．